黙劇プレゼンツ

ちょっぴりをたっぷり。

おかえり、オートバイ。

 

1年前、クルマを買ったタイミングで一度バイクを手放した。

クルマの方が雨に濡れないし、運べるし、安全だし、楽だ。

しばらくしてすぐ休職し、今もう1年が経った。

 

余裕が出てきたのでバイクを買った。

バイク屋さんには高校生やおじさん、書類を提出しにきた人など、いろんな人がいた。

20年前のバイクだからそんなに高くもないし、

そんなに大きくもない、めちゃくちゃ早いわけでもない、

ちょうど良いバイクに出会えてよかったと思う。

 

鍵をもらって、エンジンをふかす。

スロットルを開けると素直に回転数の針がポンと上を指す。

「あたしゃ、まだ走れるよ」とバイクが言っているようだった。

 

ちらとまわりのバイクを見ると、みんなライトがいかつい。

スポーツバイクが流行っているから、ライトがつり目のような、

鷹のような目をしている。かっこいいと思うけれど、

私はあんまり、、、だった。

 

買ったバイクのライトは四角い目、流線型のカウルで、

デザイン的にはちょっと昔の小田急ロマンスカーみたい。

メカのような固さもあり、気に入っている。

 

ともあれ慎重にクラッチをつないで、公道に出た。

1年バイクに乗ってなかったから不安だったけれど、

ふつうに運転できた。

「おぼえているもんだなあ」

 

パーンと制限速度へアクセルを開ける。

ゆるやかなカーブで体重を移動させると、スーッと曲がってゆく。

 

少し走っていると、股関節がつりそうになった。笑

バイクを運転するときニーグリップといって、

タンクを足で少しはさんでバイクを安定させたり

カーブに活用したりするのだけど、この筋肉がほぼ無くなっていたようだった。

「きつー笑」

 

おかえり、オートバイ。

すべての景色を背景にしてやろう。

景色の先頭は私と。この鉄塊で。