黙劇プレゼンツ

ちょっぴりをたっぷり。

2018-11-01から1ヶ月間の記事一覧

解説依頼の背景。「缶をあけるとき」

考えてみると、世の中はだれかの解説だらけだ。 思えばかならず誰かの解説が、頭をかすめる。 映画だって、テレビ番組だって、スポーツだって、だれかの解説が、じぶんのなかの根拠になって、頭のなかでなんか言ってるのだ。 言葉が生きているなんて、信じな…

心地よい呼吸を求めて・針生 想 解説「缶をあけるとき」

しばらく彼の作品に触れないうちに、黙劇さんは作品作りの拠点を手に入れたように思う。そこで見た景色や空気、街を行く人達の質感を背景に構えたい、そんな野心が作品の中に流れているのが垣間見えたからだ。今作「缶をあける時」ではカメラのレンズの存在…

缶の中に詰まっているストーリーの空気・係数 解説「缶をあけるとき」

本書は煙草の存在感が実に大きい。「煙」という文字が五十回以上出てくる。それほど主人公の金羽にとって、煙草はなくてはならないものなのだ。しかし、金羽の生きる世界では、煙草を吸わない人に生活スタイルを合わせなければならず、家族の前でさえ安心し…

にごる空気のなかで・七月なつき 解説「缶をあけるとき」

黙劇氏は残念なことに、やさしいひとのようだ。 氏がそれを自分のこととして書いているかはわからないが、どの場面からも心もとなく、くたびれた匂いがする。 シャチは息のできる場所を探そうとしていて、ラクダは作ろうとしている。ふたりは不平を言っても…

合わせつづけた鏡にうつるものたち・四流色夜空 解説「缶をあけるとき」

二枚の大きな鏡を近い距離で向かい合わせ、その中から覗きこむと、鏡の中に直線の方向に無限に延長されていく空間が発生しており、そのただ中に突っ立つ自分を基点に、自分自身も次々と増殖しているのが分かるだろう。鏡合わせのその空間は物理的空間ではな…

また煙草が吸いたくなった・斗掻ウカ 解説「缶をあけるとき」

つかみどころがない。まるで煙のように、ゆらゆらと。 読後、ほんのりと残り香を漂わせて、この作品は僕のみぞおちの浅い部分にしっとりとした淡い熱を落としていった。 缶をあけるとき。というタイトルは、言い得て妙だ。はじめに「缶」という文字を見たと…

かっこいいとはどういうことなんだろう

「おまえの好きなCBR止まってるぞ」 視線を声のする方へ向けると、中学生くらいだろうか、自転車に乗った2人がぶつぶつとなんか言っていた。ひとりがCBR好きの友人を茶化したセリフのようだった。茶化されたもうひとりは「うん…」と言ってそんなにリアクショ…

感情的と言葉

村上龍の「音楽の海岸」という小説の中に、こういうフレーズがある。 力を持つのは言葉そのもので、その言葉を発する人間の気持ちなど、何の役にも立たない。 感情的になる人は、たくさんいる。私もその中の一人だとおもう。しかし、仕事において感情的にな…