黙劇プレゼンツ

ちょっぴりをたっぷり。

有線という選択

 

 最近は有線イヤホンを耳からぶらさげている人を見なくなった。みんな補聴器のように耳に白だったり黒だったりする無線イヤホンを装着している。そもそも私は外で音楽聴かなくなったので、あんまり関係ないのだけど、流行りに乗って無線イヤホンを買ってもみたりした。

 無線イヤホンはフリーダムさがすごい。うざったかったあの風でなびくケーブルを気にする必要がなくなり、なんだか軽くなった感じだった。

 Bluetoothイヤホンと書くべきだったかもしれない。まあ無線イヤホンで通じるよね。

 無線グッズはイヤホンだけでなく、マウス、キーボードにもわたって私たちのデスク環境を整えてくれる。と思っていた。

 無線のメリットはケーブルがなくなることだ。ケーブルは空き地に生えるツタ植物の雑草のようにうねうねしている。こいつがあるからホコリがたまるし、デスクのまわりを這っているのを許容できない人もいるわけだ。

 デスク環境の整備は、よりすっきりしている方がいいとして、ミニマリストだとかガジェットに神経質そうな人が、動画にして上げている。デスクの上はすべて無線グッズで統一し、唯一のケーブルはPCの電源くらい。とてもきれいだと私も思う。

 

 とてもきれいなのだけど、デメリットもある気がする。電池問題である。エネルギー供給問題は社会的な問題でなく、1畳に見たない私のデスクの上でも発生している。

 もちろん充電をたまにしたり、一度電池を交換すればけっこうな期間使えるのだけど、これをやるときがまあめんどくさいと思ってしまう。例えばmacの純正キーボードであれば、余ってるライトニングケーブルどこいったっけとか、マウスだったら単4電池どこいったっけとか、それこそホコリのたまったガジェット箱をかきわけて探す必要がある。

 んじゃあ最初から有線でいいのでは、というわけである。

 有線のメリットは、電池交換が不要ということ。PCにぶっさせば半永久的に使えてしまう。これでいい。

 

「え、ケーブルが這いつくばっているのってダサくない?」と思うかもしれないけど、これは価値観の違いというやつで、もともとPC機器はケーブルの美学があったんじゃなかろーか。

 ネットミームにもなっている「Lain」で主人公レインがケーブル配線にまみれた部屋で別世界ワイヤードと交信する光景を思い出してほしい。別世界へは確かにネットという場所が強調されるけれども、そこに行くための物理的身体性には、ケーブルがあることがとても重要だったはず。劇中では当時あまり普及していなかったネットを表現するために、電柱の配線やLainにまとわりつくケーブル、PCの触り方などが表現されている。

 エヴァでも通常の稼働時間ではケーブルで供給されるエネルギーで動く。エヴァが地下から出てきて使徒と戦うとき、エヴァの動きにあわせてケーブルが波打つあの光景があったよね。

 それに、ひとつの機械が、ひとつの役割をもって物理的に接続されるということに美しさがないだろうか(これはちょっと気持ち悪い価値観かもだけど、ある)。

 ともあれPCにはキーボード、マウス、光学ドライブ、ペンタブの4本のUSBがぶっ刺さっている。