黙劇プレゼンツ

ちょっぴりをたっぷり。

ウテナによる革命。運命という設定は、はたして絶対なのか。(少女革命ウテナを観て思ったこと)

 

あてんしょん--------------------------------

ネタバレ注意です。

気になる方は読まずに視聴をおすすめします。

この記事を間違って読んでしまって

さらに「観てみたい!」と思った方へは

24時間以内に観てみないと、

蕁麻疹が出てしまうかもしれません。

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はい。

感想のような、紹介のような、思ったことを並べただけです。

めずらしく、章立て(という名の分割)して書いていきます。

また、概略やおもしろい部分、セリフなど解説が正確で詳しいのは

ねりまさんの

amberfeb.hatenablog.com

 

ですので、ぜひご覧ください。

 

 

さて、

少女革命ウテナを観て【しまった】

名前は聞いたことがあった。

90年代を代表するアニメーションくらいだと思っていた。

まず気になったのは、タイトルで、

少女が革命する その名をウテナ

という漠然とした意味で捉えていたのだけど、

物語が始まっていくにつれ、そのタイトルの捉え方が間違っていたことを知ることになる。

また、幾原邦彦監督作品なのだから、演出が演劇っぽい(よりグラフィカル

であり、関係のない音声で間をとるなど)があるんだろうなーという程度でした。

セーラームーンTVシリーズ1期(いわゆる無印)では何話か演出をしており、急にかっこよくキメキメになる回はだいたい幾原演出がかかっている。

さてウテナ、観た後のポカーン感がすごい。

それは「わからなかった」ときのポカーンではなく、

「情報量」と「ストーリー」からくるポカーンだった。

そしてこれは、影響されないわけがない(強調否定)とも思った。

とにかくいくつかのポイントを書いていけたらいいな。

 

◎一人称が「ボク」

今や珍しくもない一人称「ボク」だけど、

女性キャラしかも主人公が使うというところに、おもしろさがある。

違和感と言ってもいいのかもしれない。

アニメでボクという一人称が使われるとき、

それは往々としてひ弱なキャラが多い印象があるからだ

(主人公の頼りなさを演出するためなど)。

しかし主人公ウテナはスポーツ万能、天真爛漫で痩身麗人、

キャラ設定的には「男」のポジションではあるのだけど、

性別は女性で「あたし」「うち」「わたし」

などではなく「ボク」というチョイスである。

これが主人公の気にしている物語の一番最初のキーであると思う。

 

◎かしら?かしら?ご存知かしら?

ウテナを観た人からすると「あったねそんなの」

くらいの印象かもしれないけど、好き。

決闘(バトル)がはじまる前に、なんでもない女生徒2人が影絵でウワサ話をする、

というだけのシーンなのだけど、、、

この会話劇がコメディ的におもしろい。そのはじまりにいつも夕暮れになって影絵が登場する。決まって「かしら?かしら?ご存知かしら?」というフレーズで始まる。後半ではウテナの靴箱に果し状が入っているので、最後のオチにウテナからツッコミが入る。

そう、影絵なので、シルエットだけのアニメになって、

会話劇だけなんだけど、変なポーズをとったりして、観ていて箸休めになっている。

で、ダーーーーーーーーーーーーン!

とシーンが変わってバトルシーン。

「ぜったい!うんめい!もくじろく!」と壮大な歌が流れてきて、

螺旋階段をウテナがキメ顔で登っていく毎度のシーンが展開される。

この流れは、とても最高なのです。

 

◎「生徒会」のキャラとストーリーが濃い

前半では「生徒会」の生徒たちがウテナに決闘を挑んでくる。

(少女向けアニメ兼バトルストーリーなので汗)

後半より、前半のキャラとストーリーが濃いので私は好きかな。

(後半は根室記念館で「妬み」を増幅させた生徒がウテナへ決闘を挑むのだが、

自分勝手な納得できない妬みだった印象があったので)

姫宮アンシーというバラの花嫁を得るため、

または過去への復讐、自分との決別のため、

ウテナへ決闘を挑んでいく、、、

姫宮アンシーが好きな剣道部の西園寺は彼女として姫宮アンシーを迎えたいことから、

フェンシング部部長の有栖川はいわゆる奇跡を信じないポリシーから、

ピアノ奏者の薫は、小さいころピアノをいっしょにひいていたという間違った記憶から、

・・・

思い出を克服するために、剣を手にし、ウテナへ挑んでいく。

ウテナはぜんぜん関係ないのに、姫宮アンシーを守るために決闘する。

決闘という方法しか、彼ら彼女らには残されてなかったのかもしれない。

胸のバラを先に落とされたほうが敗北する、剣を使った決闘。

 

◎王子様は、だれか

王子様がお姫様を守る。

物語のテッパンであるこの法則は、この少女革命ウテナによって、

こねくり回されて「革命」されることになる。

まず「少女革命ウテナ」にはすでにお姫さまが設定されている。

それは姫宮アンシーという、ウテナからすれば大事な友達になる。

生徒会などのまわりは、

王子様は私だ、またはお姫様を手に入れるためだといって決闘を申し込む。

それらを王子様の仮設定であるところのウテナがばったばったと倒していく。

しかし、ウテナもお姫様願望がないわけではなかった。

そもそも男装していたり、もらった指輪をしているのは、

小さい頃に出会った王子様に憧れてだったからだ。

 

じゃあダブルお姫様ってことでいいじゃんてことになるのだが、

(前半のEDではダブルお姫様?を感じさせるものがある)

そうするとじゃあ姫宮アンシーの王子様って誰になるのよって話になり、

物語(一貫性のあるまたはエピソードとして)のつじつまが合わなくなる

 

と思っていたら、姫宮アンシーの設定が明らかになったとき、

私は愕然とした。

 

◎人形か、奪われるべき花か

 苦しみの十字架、姫宮アンシーという設定

決闘に勝ったものが、姫宮アンシー=バラの花嫁をもらうことができる。

という設定でお話は進むのだが、

勝負を挑んでいく「生徒会」が表ボスだとしたら、

裏ボスが「理事長」になる。

この理事長は、すべての苦しみのさだめを受け続ける「姫宮アンシー」を苦しみから開放し、身代わりになろうとしていた。しかしそのためにはめちゃくちゃ強い剣が必要だったのだ。

そして剣は決闘する際にその人の胸から出てくるものだった。

つまりウテナは、理事長の剣になるべく何度も決闘を経て、めちゃくちゃ強いことを証明された剣を持っているということで、最初から(それはウテナの憧れを抱いた幼少期からも!)仕組まれていたのだった。

姫宮アンシーは劇中、ほとんど感情的にならない。ロボットのように話し、人形のようで、気持ち悪いくらい。生徒からは妬まれたりしてぶん殴られて床に倒れるシーンなどはかわいそうすぎるのだけど、そんな人形みたいだったらしょうがないよね...というくらい。

しかし、設定上の「バラの花嫁」がほしいだけの人たちとは違うウテナは、

ふつうに姫宮アンシーと友達になりたかっただけだった。

その気持ちが通じ合い、ボロボロのウテナは剣を使わないで姫宮アンシーの棺を開けようとする。理事長は「やめろ!」と言う。だって苦しみのさだめが、どこに行っちゃうのよって話で、それ理事長がやろうとしてたんだけどーみたいな。かっこいいところをすべて持っていくウテナ

数多の剣が、ウテナへ向かって、暗転する。。。

 

 

ウテナはなぜそこまでしなければならなかったんだろう

少女という言葉から、何を連想するだろう?

これは概念的な話で、なんの確証もないのだけど、

ウテナは姫宮アンシーの王子様になりたいわけではなく、

理事長のお姫様にもなりたかったわけでもなく、

個人の独立した存在になりたかったのかもしれない。

それはストーリーのための設定(王子様とかお姫様とか)を

ぶち壊したい思いがあったのかもしれない。

ウテナ以外の登場人物は、設定にこだわった。妬みにこだわった。憧れに執着した。

実は姫宮アンシー自身も「苦しみを受け続ける」という設定に最後一歩手前までこだわり、

決闘中のウテナを刺してしまう…。

そんな中、ウテナだけは、目の前の友達を助けるという、

設定も、ジェンダーも、概念も振り切ってみせたのだった。

まさに、少女という設定を革命したウテナだった。

少女のウテナではなく、革命のウテナだった。

 

*虚構の装置をどれだけ作ることができるか

最後に。というかおまけ?

 

この革命のウテナを見せるためには、

逆に言えば、振り切るべき虚構を作りだなければ、できません。

それは社会的なジェンダー観である少女のイメージであったり、

バラの花嫁という虚構の設定であったり、

お城だったり、白馬だったり、学園だったり、王子様だったり、

劇中最後の決闘場所である理事長室にはプラネタリウムがありました。

プラネタリウムは本物の星ではなく、映像的な虚像なわけです。

これらの虚構の囲い込みが、すごいな、と思いました。

これだけ囲い込むように作れるのか、というほど虚構の装置がありました。

唯一ウテナだけが、その虚構の装置で機能していなかったわけです。

 

ぜったい!うんめい!もくじろく!

って、もしかして、裏返せない虚構の分厚さを演出するための

キーワードだったのかもしれません。

 

 

ああ、でも、ウテナ....

あなた死んじゃった...の.........?

 

 

 

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作品概要

少女革命ウテナ』 

■原作    ビーパパス ■監督    幾原邦彦
■シリーズ構成    榎戸洋司
■キャラクターデザイン    さいとうちほ(原案)長谷川眞也
■音楽    光宗信吉 ■アニメーション制作    J.C.STAFF
■製作    テレビ東京読売広告社 ■放送局    テレビ東京ほか
■放送期間    1997年4月2日 - 1997年12月24日
■話数    全39話