黙劇プレゼンツ

ちょっぴりをたっぷり。

お酒と夜、お酒のない夜。

 

 家にいることが多くなり、お酒を飲むことが多くなった。多くなったといっても、缶チューハイ350mlを1本飲むくらいで、最近、夜にお酒を飲む習慣ができていた。

 お酒を飲むと気持ちいい。考えることを放棄して、溜飲でノドを鳴らす。

 今日も、いつものグレープフルーツサワーを飲もうと思い、コンビニの冷凍ドリアを片手に持ちながら、冷蔵庫を開けた。が、閉めた。意外とコンビニには外食難民がきているようで、人はいつもより多かった気がする。外食に期待するより、コンビニで買って、ひっそり食べたほうが気が楽なんだろう。ぱたんと閉めて、レジに向かう。

 なにかが自分のなかの習慣になってしまったことに、どこか気持ち悪さを感じたのだった。

 映画『イノセンス』では、バトーが狭いコンビニでドッグフードを買うシーンがある。家に帰り、靴を拭いて、犬にごはんをあげて、ソファに身を投げる。あのシーンの気持ち悪さは、生活感というよりもむしろ習慣だったと思う。楽しいとか嬉しいとか、そういうのじゃなく、ただやっていることがある。同じ動作をくりかえすからくり人形のように。

 飲んでないとやってられないんだ、という気持ちは確かにあるのだけど、なんか最近は、そんな憤りみたいなものが、とてもちっぽけなものに思えてしまっている。

 お酒は好き。おいしいお酒を飲んだときは最高だし、誰かと交わすお酒なんかも、余計おいしい。

 お酒のない夜がさみしいと感じるほど、私はそのさみしさを持ってはいなかったのだった。