黙劇プレゼンツ

ちょっぴりをたっぷり。

海辺の時間

  鎌倉の海は、江の島を中心にすると陸から見て左側に位置し、鎌倉市街のショッピングを楽しんだ人たちやサーフィンをする人たちが訪れる。

  特に目的もなく、海を見るだけに海辺に立った。天気がよく、十分過ぎる自然光のもとで、海を見ていた。

  砂浜では写真を撮る人、ボーッとしてる人、ゴミをひろう人、凧を揚げる人、犬と散歩する人など様々。

  足のさきまで来る波を見たあと、道路と砂浜の中間にあるベンチでボーッとすることにした。トンビが飛んでいる。

  ベンチに座って水平線を見たり、トンビが風に乗ってるのを見たり、ときおりハトがやってくるのでその挙動を見たり、通り過ぎる自転車のメーカーを凝視したり。

   光景は飛び込んでくるがなにかを考えることはしなかった。

   左手のベンチにはサングラスをかけたオジサンがアサヒスーパードライ350ml缶を持って海を見ていた。

  右手のベンチにはマフラーで目元まで顔を隠し、本を読んでいるポニーテールの女性もいた。

  ボーッとするのに飽きたので駅へ向かおうと道路を歩いていると、そういう、ベンチに座ってボーッとしている人が何人もいた。多くはなく、ちらほらという程度だったが、自分と同じように呆けにきたようだった。忙しく走る車は信号が赤くなるまで走り続けている。

   なにかあっても、ここに来ればなんとかなる気がする。海を見たからといって、なにも事態は変わることがないけど、少し歩いて、陽の光を浴びて、ボーッとしているうちに、どうにかなるんじゃないか、という楽観がじわじわ生まれる気がするのだ。