黙劇プレゼンツ

ちょっぴりをたっぷり。

本 背表紙

 ぐちゃぐちゃに押し込めていた本棚を整理しようと、本を全部出して整理した。漫画、小説、ハウツー本、雑誌、美術館のチラシなどが生い茂っていた。本棚と本の割合がつりあっていないため、本の手前に本を置くようにしていた。自然と奥の本は背表紙が見えないため影が薄くなる。なんだか奥の本がかわいそうだなあと思ったので、全部の本の背表紙が見えるように、本を差し込んでいった。入りきらなかった本は床にじか置きにされる。床になんて、と最初思ったけれど、平置きではなく背表紙が読めるように垂直に置いた。ブックスタンドが活躍した。

 背表紙が見える。この安心感。本がある、というだけなのに妙に落ち着く。

 小さいころ、今は亡き祖父の家に行ったとき、小学館の図鑑が本棚にきれいにしまわれていたことを思い出した。ほこりっぽくも、よく片付けられた畳部屋で、寝っ転がって図鑑をめくっていた。昼になると、祖父はお茶菓子を出してくれた。砂糖とミルクたっぷりのコーヒーは、こどもながらこれが大人の味なんだなあとおそるおそる飲んでいた。視界には本棚があった気がする。