黙劇プレゼンツ

ちょっぴりをたっぷり。

ガソリンスタンドの素敵なおじさんの話

 素敵なおじさんだなあとおもった。

 ガソリンスタンドで給油してもらい、クレジットカード支払いのレシートにサインしたときのことだった。

 「原稿書いてるでしょ。ペンの持ち方でわかるよ」

 と言われ、戸惑いながらも「そうです。よくわかりましたね」と返事をすると、えへへとおじさんはごまかした。

 なぜ、ガソリンスタンドのおじさんは、わたしが原稿を書いていることをわかったのだろうか。もし、ペンの持ち方で人のやっていることがわかるとしたら、すごい。さすが、ガソリンスタンドで1日に何人も見ていることはある。

 でも、社交辞令なのかもしれない。ペンの持ち方がそれっぽかったというだけで、ちょっと言ってみただけかもしれない。

 いずれにせよ、悪い気分はしなかったし、見透かされたようなきもちわるさもなかった。

 そういうちょっとしたことを言える人はいいなあとおもった。自尊心をくすぐるような、それでいて後味がすっきりとした、何気ない一言。