気温が夏っぽくなってきた。そろそろセミが出てくるのかなあ。
じめじめとした地面の中でセミは出番を待っているのかもしれない。
所変わってここは電車の中。22時を回ると、電車の中は疲労感に包まれた人たちの楽屋となる。スマホを持ったままうたた寝するOL、缶チューハイをすするオジサン、死んだように眠る寂れたサラリーマンたち。
おそらく、会社や職場で思いっきり仕事をして、または思いっきり仕事ができなくて、明日のことを考えながらうなりつつ、目をつむっている。
疲れたという感情は、動物のよくできた仕組みなのかわからないけれど、考えることをやめてしまう。もはや考えるなんていう疲れることはやめなさいというメッセージなのかもしれない。
「考えるのはやめよう」そういう空間が、夜の電車にはある。ときたまスマホを落とすOLさんがいて、空間がハッとするだけ。誰が乗ってこようと誰が降りようと関係がない。
なんとなく、地中にいるときのセミだなあって思った。