黙劇プレゼンツ

ちょっぴりをたっぷり。

みんなあきれかえるほどの空しさを抱えたまま仕事をしているものさ。

 

「このままだったら、やめようと思うんです」

 今日はいつもよりネガティヴだな、と思ったら、こんなことを切り出す。

 たまたま私が欠席した会議で、上役とやりあったらしい。

 そんなことを私に言われても困るのだけどなんて軽いノリで重く話を聞く所が、私の悪いところかもしれない。聞いているようで、響いていない、そんな聞き方をしてしまっていたのかもしれない。でも仕方ない。目の前の運転に集中させてくれ。

 右車線への合流のため、私は目視しながらハンドルを右に切ろうとする。

「予算の指摘をしたんです。でもその事業の予算はまだとってないって。なんだそれって話ですよ。もしそんな予算の組み方だったら、ボーナスに少しでも補填してくれって話ですよ。それに会議前にもう決まっているのか知りませんけど、なんで事業内容が会議前に決まってるんですかね」

 

 私はまず、仕事でもなんでもそうだけど、理解することに努める。

 この人は、順番が気に食わないらしい。予算があってはじめてできる事業だろう、と。

 たしかにその通りだ。金銭がないところに事業もへったくれもない。

 ただ、なぜ予算を決めてないのだろう?

 そもそもその会議は、どんな会議なんだろう?

 どんな内容にするかで、予算を決めていくスタイルもある、いわゆる企画。

 それに、ボーナスに補填されるかどうかは、正直わからない。もちろん会社の業績としても考えなくちゃいけないし、個人のがんばりがどこまで反映されるものなのかも。

 

 逆撫でするわけにもいかないので、私も昔こんなことがあったよ、と同じケースの話をしてみる。

 はあ、と大きなため息が聞こえる。

 仕事してると、あきれかえることが多い。自分が正しいと思っていたことは他人はそう思っちゃくれないし、いいことをしたと思っても、「良かれと思って」状態になって逆の印象になったりもする。

 じゃあどうすればいいんじゃい!そりゃ空しいと思う。

 一向に手応えはないし、見返りなんか、そんなものはない。

 

 でも仕事をしていかなきゃいけないんだよねえ。

 鈍感になっていく人もいるし、攻略するために戦略を立て直す人もいる。勉強しなおす人もいる。お酒に逃げる人もいる。

 

 それでも仕事をし続けなくちゃいけない、というのが社会での大人の振る舞いだから。

 そんな大人になりたくないのなら、ならなくてもいい。現在の職業は、目が回るほど自由なのだから。

 

 信号待ち。私は否定もしない。肯定だってしない。だらだらと仕事してもいいと思うし、すっぱりやめたってかまわない。他人の人生を決められるほど、私は偉くない。

 

 みんなあきれかえるほどの空しさがあるものさ。

 それでも仕事をしているのさ。

 意味とか、順番とか、そういうものより、もっとシンプルだと思うよ。

 意地かもしれないし、さ。