黙劇プレゼンツ

ちょっぴりをたっぷり。

かっこいいとはどういうことなんだろう

 

 「おまえの好きなCBR止まってるぞ」

 視線を声のする方へ向けると、中学生くらいだろうか、自転車に乗った2人がぶつぶつとなんか言っていた。ひとりがCBR好きの友人を茶化したセリフのようだった。茶化されたもうひとりは「うん…」と言ってそんなにリアクションをとらなかった。じゃ、おれはジュース買ってくるからといってコンビニの中に消えた。

 私はちょうど、このコンビニの駐車場で休憩していた。おにぎりを食べ、お茶を飲んで出発するところだった。ここから1時間くらいか、とスマホを見ながら帰路を心配する。白と赤と青、トリコロールのバイク、CBRといっしょに。

 中学生から「CBR」という単語が出るなんて、さすが車の国、平塚だなあと思った。たぶん日常的にモータースポーツに影響されるような土地柄なんだろうなあとおもった。車や二輪好きが多い地域なのは少し知っていた。

 エンジンをかける。刻みの良い音が鳴った。水槽のなかの魚のように、器用に駐車場を抜け出して、道路に出る。サイドミラーをちらっと見る。さっきのCBR好きの少年がこちらをぼーっと見ていた。

 CBR、好きなのだろう。中型二輪の免許は16歳から取れる。たぶん、免許をとることを決めていて、どんなバイクにするか見定めるなか、友達にオレはCBRにするとでも宣言したのだろうか。

 

「かっこいいとはこういうことさ」というセリフは、ジブリの名作「紅の豚」のキャッチコピーである。意味がわからない。だけど、なんかかっこいい。かっこいいという意味がわからないから、なおさら謎めいていて、それでいて断言しているところに説得力のインパクトがある。

 

 バイクに乗っている人をみると、素直にかっこいいとおもう。なぜ、かっこいいとおもうのかは、まだわからない。エンジンにまたがっている野蛮さからだろうか、ヘルメットで顔がわからないからだろうか。「速度がある」ことからだろうか。メカだからだろうか。謎である。

 

 なぜか憧れの対象になる、バイク。そしてかっこいいと言われるもののひとつになっている。乗っていてもよくわからない。

 

 信号待ちで商店のガラスに自分の姿がうつる。我ながら、けっこうかっこよかった。

 理由は、わからない。かっこいいっていうのは、どういうことなんだろう?